「……ちゃん、礼ちゃん!」

病院の売店で、姪の乃々香に服の袖を引っ張られてはっとした。


「ごめん、何?」

「何、じゃないよー。乃々香、このお菓子に決めたんだけど。買ってくれるんでしょ、礼ちゃん」

袖を引っ張るのとは反対の手でつかんだお菓子を私のほうに見せながら、乃々香がぷくっと可愛らしく頬を膨らませる。


「そうだよ。あとは飲み物も選ぼうか。乃々香と乃々香のパパ分」

笑いかける私を乃々香はまだ不貞腐れた顔で見ていた。


「あと、礼ちゃんの分もでしょ?さっきから変だよ、礼ちゃん。ぼんやりして、いつもより忘れん坊」

「そうだね。もう忘れん坊にならないように気をつけるよ。飲み物、あっちだね」

ドリンクがたくさん並んでいる冷蔵の棚を指差してそう言うと、ようやく乃々香も膨れた頬を元に戻してくれた。


「乃々香はりんごジュースにする。パパはねー……」

嬉しそうに家族の話をしながら歩いていく乃々香の小さな背中を追いかける。

そうしながら、すっかりいつもの調子を失っていた自分を悔いた。