やっと帰る気になってくれたらしい。
安心して気を緩めていたら、ソファーに浅く腰をおろしたままの広沢くんに急に腕をつかまれた。
ソファーの前で屈んでいた私は、不意を突かれて思わず尻もちをつきそうになる。
後ろにぐらつきかけていると、広沢くんが私の腕を引っ張った。
強い力で引き寄せられて、ソファーに腰掛けていた広沢くんの足の間に正面から倒れこむ。
気付けば咄嗟に彼の腰にしがみついてしまっていて。
はっと顔を上げると、広沢くんが私を見下ろして意地悪くニヤついていた。
「碓氷さんから抱きついてきてくれるなんて嬉しいです」
「やめてよ。事故なんだから」
不意を突かれたせいとはいえ、自分の失態が恥ずかしい。
「ほら、早く帰る準備して!」
恥ずかしさを誤魔化そうとしるせいで、自然と口調もきつくなった。
私は何をやっているんだろう……
広沢くんを押し遣るようにして立ち上がる。



