その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―






洗い物を終わらせてからリビングに戻ると、まだ広沢くんがソファーでだらだらしていた。

ご飯を食べ終えたら帰るように促したのに、「お腹いっぱいですぐに帰れません」と言うので放置していたら、完全に人の家で寛いでいる。


「もう充分休んだでしょ?いい加減に帰りなさい。もう11時じゃない」

このままぐずぐずされて終電を逃されたりしたら困る。

後ろから声をかけても動こうとしない広沢くんの肩を揺すると、振り返った彼が上目遣いに私を見てきた。


「まだ終電まで1時間くらいあるんで大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃないわよ。明日も仕事なんだから、さっさと帰ってお風呂に入って寝なさい」

「その言い方、お母さんみたいですね」

私の話を聞き流してけらけら笑う広沢くんに、冷めた視線を投げかける。


「じゃぁ言い方を変えていい?早く帰ってもらわないと、私がお風呂に入ったり寝る準備ができなくて迷惑なのよ」

「お風呂だったら気にせず入ってきていいですよ。俺、酔いが醒めるまでもうちょっといます。碓氷さんがビール出したりするから、眠くなっちゃったんで」

口元に笑みを浮かべると、広沢くんがソファーのクッションを抱いて身体を深く沈みこませる。


いや。そんなの絶対嘘でしょ。

私が洗い物している間、テレビ見てケラケラ笑ってたじゃない。