その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



キッチンのコンロである程度炊いてしまってから、ダイニングテーブルに用意したカセットコンロの上に土鍋を載せる。

カセットコンロの上で鍋をグツグツと焚いている間に、箸や食器を運んで食事の用意をした。

そうやって鍋と二人分の食器を並べると、一人では広すぎると感じているダイニングテーブルがいつもより小さく思える。

こんなふうに自分以外の人の分まで食事の用意をするのはいつぶりだろう。

ふと、最後に自分以外のために食事を用意したときのことを思い出してしまって眉を顰める。

もうどうでもいいことだ。


「広沢くん、できたわよ」

人の家だと言うのにソファーで寛ぎながらテレビを見ている広沢くんに呆れ顔を向けながら声をかける。


「おー、美味そうなにおい」

勝手に押しかけてきて迷惑に思っていたけど、嬉しそうに笑ってそう言われると、なんだか憎めない。


「適当に座って。飲み物出すから」

広沢くんに苦笑いを返すと、冷蔵庫から缶ビールを二本取り出してダイニングテーブルに戻った。