その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「いや。あるでしょ?今朝俺が碓氷さん家を出る前に言ったこと覚えてます?」

何か覚えとかなければいけないことを言われた記憶はないのだけど。

考えてもわからず首を捻っていたら、広沢くんが小さくため息を吐いた。


「俺、言いましたよね?今日は一日しっかり休んでくださいって。ちゃんと休んでなかったら、今日の夜も押しかけますよ、って。それなのに碓氷さん、言うこと聞かずに家でめちゃくちゃ仕事してたじゃないですか。だから、来たんです」

そういえば、そんなことも言っていたかもしれない。

でも所詮口先だけで、本気で来るなんて思ってもみなかったから聞き流していた。


「だからって……何の連絡もなく突然来るなんて思わないでしょう?」

「だって俺、碓氷さんの連絡先知りませんから」

「嘘ばっかり。昨日は勝手に電話番号調べてかけてきたじゃない」

しらばっくれる広沢くんを睨む。


「だけど、個人情報は削除しろって碓氷さんに怒られたんで、言われたとおりに消しました」

「…………」

広沢くんはそう言うけど、本当かどうか疑わしい。