その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



「お疲れ様です。碓氷さん、体調どうですか?」

「体調はもう大丈夫だけど……一体何をしに来たの?」

「何、って。碓氷さんがご飯ちゃんと食べられるかなーと思って、食材買ってきたんですよ。身体もあったまるし、鍋しましょう、鍋!」

両手にスーパーの袋を抱えた広沢くんが、そう言いながら人の家に上がり込んでくる。


「ちょっと待ってよ。そんな勝手に……」

「あ、もしかして。碓氷さん、土鍋持ってなかったですか?」

「二、三人で囲める小さいのはあるけど………」

「さすが碓氷さん。じゃぁ俺準備するんで、キッチン貸してください」

「待って。そういう問題ではないのよ!」

許可なく部屋の奥へと入っていこうとする広沢くんを、廊下でなんとか引き止める。


「じゃぁ、何が問題なんですか?」

広沢くんが、腕をつかまえて引っ張る私を振り返る。

不思議そうに小首を傾げる彼に、思わずため息が溢れた。