その瞳に涙 ― 冷たい上司と年下の部下 ―



二度目に鳴ったインターホンの音で、私はようやくある違和感に気が付いた。

やたら家の中に音がよく響いてくるなと思ったら、これはマンション外側ではなく玄関のドアの横に付いている内側のインターホンが鳴っているのだ。

宅配業者さんによっては、他の同じ階の部屋の人に荷物を届けたついでにそのまま直接うちの玄関前まで来てくれるときがたまにある。

何の疑いもなくインターホンの設定を切り替えた私だったけれど、ディスプレイに映る人物の姿を見た瞬間、その画面を凝視して固まってしまった。


え?どうして?

一回ディスプレイから目をそらし、もう一度よく見直してみる。

でも、やっぱりそこには広沢くんの姿が映っていた。

広沢くん、何しに来たの……?

ニ日連続での彼の訪問に戸惑っていると、本日三度目のインターホンが部屋に鳴り響いた。


どうやら、私が出るまで何度だってインターホンを鳴らし続けるつもりらしい。


「はい……」

諦めて、仕方なくインターホンに出る。