高校卒業後俺は就職して一人暮らしを始めた 。


職場では俺が一番年下だから馴染めるか不安だったけど今はそれなりに上手くいっている 。

やっぱり俺は勉強するより働く方が性に合っている気がする 。




透子は大学に進学してまだあのマンションにお義父さんと一緒に暮らしている 。


透子は大学で友達も何人かできて友達の話を楽しそうにしている 。




『 ピンポーン 』



インターホンが鳴って誰だか確認せずすぐドアを開けた 。



「 合鍵渡したのに 」


「 こういう方が蒼介くんに
 迎えられてるみたいで良いから 」



俺の家に入れる女の子は1人だけ 。


透子が敬語をやめて俺を下の名前で呼ぶようになったのはつい最近 。


俺は付き合って8ヶ月くらいから透子って呼び始めたんだけど透子には呼び捨てはまだハードルが高いらしい 。



「 荷物貸して ? 」


「 ん 、 ありがとう 」



透子の荷物を受け取って部屋の隅っこに置く 。


透子は毎回ちゃんと 『 おじゃまします 』 と言って部屋に入ってくる 。



合鍵だって渡したし俺の部屋に透子の私物だって置いてある 。



半ば無理矢理私物を置かせたんだけど 。

それは別々の環境にいても不安にならないように 。 俺は透子以外の女は呼ばないって透子を安心させる誓いでもある 。



でも透子は彼氏であれ他人の部屋に自分の物を置く事に罪悪感があるみたいで 。



透子の気遣いは今も健全だ 。



「 お義父さんまたなんか言ってた ? 」



「 透子が変なことされないか心配だ〜
 って言ってたよ 」



「 信用されてないな〜 …
 まあでもこの後変なことするけどね ? 」



「 何のことか分からないです 」



こういう時だけ敬語に戻る 。


透子は何度も俺の部屋に泊まりに来ているのに毎回お義父さんは小言を言ってくる 。


初めてのお泊まりは 「 まだ早くないか ? 」 って少し取り乱したらしい 。



透子のお義父さんには何回か会った事があるんだけど小言のような事は一度も言われた事がないのに 。



「 後で嫌でも分かるよ〜
 とりあえずご飯作ろっか ! 」



透子は俺が頭を撫でると無言で頷いた 。



本当は分かってるくせに 、 分からないフリ 。


悪戯っぽく笑っているからその笑顔が了承のサインって事にしておく 。



でも今日は少しだけ賭けに出てみる 。