20分もしないうちに遠くから走ってくる小さくて可愛い女の子が見えた 。



「 ごめんなさい … !
 こんな寒いのに待たせちゃって … 」



「 全然 ! 本当にありがとう ! 」



透子ちゃんが息を荒くしてまで来てくれた 。

透子ちゃんの吐く息が白く消えていく 。


傘を差してもう片方にはもう一本の傘がある 。

肩や脚が少しだけ濡れていて白い肌が赤い 。



「 寒かったよね 」 と言って透子ちゃんの手をカイロであっためる 。



「 バイトお疲れさまです 」 と言ってえへへと笑う透子ちゃん 。



こんな優しいことが他の人間にできるかな 。

そんなところが大好きだし俺も甘えてしまう 。



「 あ 、 傘どうぞ ! 」


「 駅まで相合い傘しない ? 」


「 え … だって小野くん濡れちゃいますよ … ? 」



ほんと 、 変なところで鈍感だなあ …


すぐ俺の心配してくれるところも愛おしいけどさあ …



「 もうちょっと透子ちゃんの近くに
 居たいんだけど … 」



わざと甘ったるい声でお願いしてみる 。


透子ちゃんは押しに弱い 。


甘えたい時は透子ちゃんの押しの弱さを利用してしまう時がある 。



「 はあ〜 … バイト疲れたなあ〜 …
 透子ちゃんと相合い傘するだけで
 疲れが取れるんだけどなあ〜 … 」



「 … じゃあ 、 傘持ってくださいね ? 」



「 うん ! 」



申し訳なさがあるけど 、 うーんと悩んで渋々了承する透子ちゃんを見てもっと甘えたくなる 。



透子ちゃんから傘を受け取って数歩歩き出した時 、 透子ちゃんが俺のコートの袖を引っ張った 。



「 ん ? 」



透子ちゃんの方に顔を向けようとしたら肩に透子ちゃんの両手が乗って少し傾く 。



「 …… これじゃあ疲れは取れませんね 」



透子ちゃんは背伸びをして俺の頬にキスをした 。


自分でした事なのに耳まで赤くなって俺に目を合わせてくれない 。




あーもう 、 ほんとたまんないなあ 。




「 ちがうでしょ 」



「 えっ 」



不安そうに俺を見上げる透子ちゃんにキスをした 。



今度は唇に 。



唇から透子ちゃんの体温を入れているみたいに冷えていた体が暖かくなってくる 。



「 よし ! ! 完全復活した ! 」



俺が笑顔になると透子ちゃんもふふっと優しく笑う 。





本当にかわいくて優しい 、 たまらなく好きな俺の彼女 。