誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





「 手 !! 繋いじゃったね !! 」



小野くんの今日一番の笑顔を見た気がする 。



あの場から去るのに意識してしまって手を繋いだことは気にしてなかった 。




「 どさくさに紛れて手繋がないでください ! 」



「 何回も手繋いでるじゃん〜 」



「 不本意です ! 」



繋がれた手に力が入らない 。



夏のせいで2人とも少しべたついて 、 でも不快でもなくて 。




「 でも無理矢理離そうとはしてないね 」



「 … それは … ! 」





何度も手を掴まれたことはあるのに 、 何で今になってこんなに恥ずかしいんだろう 。


小野くんの顔を見れない 。




「 ねぇ透子ちゃん 」





「 … なんですか 」




「 あの話 、 覚えてるかな
 恋人候補にしてって話 」



「 急になんですか … っ 」



突然小野くんが真面目な顔するからなんか気まずくて苦笑いしちゃう 。



「 あれからそんなに会えてないけど 、
 俺のこと意識してくれてる ? 」



意識してないって断言できない 。


だって小野くんの元カノさんの話が頭の中に残ってモヤモヤしてるってことは 、 意識してる証拠だから 。




「 …… 意識 … しちゃいます 」



言葉に出すともっと恥ずかしい 。



今が夜でよかった 、 周りが騒がしくてよかった 。


真っ赤になってるわたしの顔を見られずに済むしうるさい心臓の音がバレなくて済む 。