誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





小野くんを見つけたら声かけなきゃ 。


すれ違いでも起きたら面倒だし 。



人混みの中で小野くんをいつでも見つけられるように顔をあげなきゃいけないんだけど 、 なんだか恥ずかしくて俯きながら音楽に集中してしまう 。




足元を見ているとわたしの前でうっすら影が出来ている 。



見上げると小野くんが手を振っていた 。



わたしは急いでイヤフォンを外して鞄の中に入れる 。




「 ごめんね 、 待った ? 」



「 い 、 いえ … 全然 …
 わたし下向いてたのによくわかりましたね 」



「 そりゃあ分かるよ 」




小野くんがしゃがんで目線が合う 。



この前会った時はラフな格好だったのに今日は白のスタンドカラーシャツにグレーのパンツでよそ行きな格好 。


顔はいいからなんでも似合ってしまうんだろうな …



今更だけどわたしの顔面 、 この人の顔面偏差値と合ってるかな 。 絶対合ってないよね 。




「 透子ちゃん 、 いつも以上にかわいい ! 」



突然の言葉に身体中が熱くなる 。




「 … そんなことないです
 … 行きましょう 」




見ていられなくなり目線を横にずらす 。




「 ん ! 」




小野くんが立ってわたしに手を伸ばしている 。




「 ? … なんですか ? 」




「 … いや … 手を繋ごうと … 」




「 まだ早いです 」




「 …… ちぇ 」




小野くんの手には触れずに自分で立った 。