誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





ずっとこの言葉を言って欲しかったんだな 。



何度も諦めたフリして全然諦めてないじゃん 。



わたしはお父さんに何もしてないのに 。




戸惑いながらお父さんはわたしを優しく抱きしめた 。




「 ごめん 、 本当にごめんな … 」




何度もそう言って背中をさすってくれた 。




「 … わたしもごめんなさい … っ
 … お父さんのことを知ろうとしなくて 」




足りなかった時間を埋めるように2人して泣きながら抱き合った 。



本当は高校2年生女子がするようなことじゃないんだけど 、 今日だけは 。




今日だけは子供に戻って甘えさせてよ 。





涙も治まって冷静になった時 、 ふと疑問が浮かんだ 。




「 そういえば …
 お父さんいつも夜どうしてるの ? 」




お父さんから離れて問いかける 。


流石に毎日仕事で泊まりなんてことはないはず 。




「 それは … ビジネスホテルに泊まったり
 本当に仕事で残業してるんだよ 」




「 なんだ … 恋人でもいるのかと思った 」




嬉しいような悲しいような 。



お父さんの再婚に反対してたわけじゃない 。



好きな人ができて幸せになってくれないかな〜ってなんとなく思う時もある 。




「 いないよっ !!
 透子のことで精一杯だし … 」



「 ごめんね 、 もう大丈夫だから 」




「 いや …
 これからはもっと家族の時間を作ろう
 娘まで失いたくないからな … 」




笑ってごまかす 。


わたしだってそうなんだよ 。



お父さんまでどこかに行かないでね 。




「 あ 、 そうだ
 8月7日お祭りに行くから夜いないよ 」



今まで夜出かけることがなかったからこんな話しなかったけど 、 今はこんな些細な会話が嬉しい 。




「 そうか …
 透子も友達と夜遊ぶようになったんだな …
 気をつけて行くんだぞ 」




友達って言っていいのか分からないけど 、 夜友達と遊ぶこともお父さんと会話することもわたしにはまだ非日常だ 。




「 うん 」




わたしは久しぶりにお父さんの前で笑った 。