誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





わたしにとってたった1人の肉親だから 。


でもこれから関係が良くなる可能性を捨てたくない 。



やっとお父さんと向き合えるようになった 。




「 … わたしのこと 、 嫌い … ? 」



何個も聞きたいことがあったのに 。


結局言葉に出てきたのはこれだけだ 。




「 … っえ 、 ええっ ?! 嫌い !? 」




思ってた反応とは違う 。


ずっと 「 えっ 」 しか言ってない 。


これじゃあ好きか嫌いかわからないよ 。




「 だってわたしのこと避けてたよね ?
 わたしも避けてたけど …
 嫌いなのかと思って 」




「 嫌いなわけないだろ … ?
 ただ … お母さんがいなくなって
 どうすればいいのか分からなくなった
 … お父さんは逃げてただけだったな … 」




お父さんは苦笑いした 。



そうだった 。


昔からお父さんはちょっと頼りなくて女々しいなんてお母さんに言われてたな 。




ピリピリとした空気が何年かぶりに暖かい空気に変わっていく気がした 。




「 … そっか …
 本当にわたしのこと嫌いじゃないんだね 」




「 当たり前だろ … !
 … こんな情けない父親でも
 ここまで育ってくれた
 … 透子のことは誇りに思ってるよ 」




ボロボロ涙が出てきた 。