誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





夜23時 。



わたしはソファーに座って父の帰りを待っている 。


今日は帰ってくるはず 。



ちゃんとお父さんと話すって決めたから 。





『 ガチャガチャ 』 と鍵をさす音がした 。



怖いけど 、 本当のことを知らないと 。



ドアが開く音がした後すぐに靴を脱ぐ音も聞こえた 。



きっとわたしだけだ 、 こんなにドキドキしているのは 。




リビングのドアを開けてすぐお父さんは声に出さず少し驚いた 。




「 おっ …… 音立ててごめんな … 」




「 いや 」 とか素っ気ない返事をしてしまった 。


そのままお父さんは自分の部屋に行こうとする 。




「 あの … ! 話したいんだけど … ! 」



なんて話そうかさっきまでシュミレーションしたのに忘れてしまった 。



わたしが呼び止めると無視せずに振り返ってくれた 。




「 …… どうした … ?
 あ … 学費のことか ? 」




「 違う 。 家族の話 」




また驚いた顔をしたけどわたしの方に少しだけ近づいた 。




「 正直に言って欲しい
これ以上関係が悪くなることなんてないから 」




「 … わかった 」




怖くて仕方ないよ 。



本当は嫌われたくない 。 嫌いだなんて言われたくない 。