「 名前で呼んでもらいたいだけ
 … お願い 」



さっきから涙が止まらない 。



わたしの方が不安で怖いはずなのに 、 何で小野くんも苦しそうな声なの ?



わたしには今小野くんを名前で呼ぶしか選択肢はない 。




「 …… そ … そうすけ … っ 」




呼び捨てとは言えない 。



ただひらがなを呼んだだけみたい 。




「 … ありがとう 」



何で小野くんは名前を呼ぶことにこだわるのかわからない 。



条件通りすぐに手が離れ 、 わたしの両手も解放された 。



小野くんにネクタイを解いてもらう前に自分で乱暴にネクタイを解いた 。



涙なのか雨なのか分からなかったけど濡れたネクタイを小野くんに投げて逃げるように体育倉庫を飛び出した 。