誰も見ないで 、 僕だけを選んで 。





「 あ 、 ありがと 」



どうやって話せばいいかわかんなくなっちゃう 。


相変わらず黒縁眼鏡の向こう側の目は優しそうで 、 骨ばった手は夏が始まりそうな今では少し熱く感じる 。




「 じゃあ 、 わたし図書室行くね 」




律の手は簡単に離れて 、 少し悲しかった 。


なんでこんなこと思ってしまうんだろう 。


もう好きか分からなくなってきたばっかりなのに 。


律を背に歩き出してすぐ 、




「 逃げないで 」




後ろから縋るように抱きしめられる 。