大和とは、小さい頃から両思いのようなもんだったから、そういう独占欲とか感じる必要がなかったのかもしれない。

周りの女子から妬まれることはあっても、大和はあたしのことが好きだって自信があったから。



「俺のことだけ考えていて欲しいなんて、ワガママだってわかってるよ。でも。ムカつくからもう帰れ」


「は?勉強は?」


「大丈夫だろ。公式に当てはめておけば」



投げやりに言う大我に無性に腹が立ってきた。



「大我なんて、知らない!」



大我の腕から逃れて、あたしは勉強道具をカバンに詰め込んで部屋を飛び出す。



「大我のバカ」



自分がなんでこんなに腹が立っているのかがわかんない。
でも、投げやりにされたことがムカついて仕方なかった。

大我にだって感情の起伏はあるだろうし、大我の事情だってある。
それなのに、あたしは大我のことを全て知りたいだなんておかしなことを考えてしまっている。



「待てよ、碧」



玄関で靴を履いていたあたしの腕を大我が掴む。



「怒ってるなら、話すのはやめよう」



怒ってる大我なんて、嫌いだ。
いつもみたいに笑ってくれないと嫌だから。