「なんでもねーよ」



不用意に言葉を告げて、碧から距離を取られたくない。
俺は、碧の1番近い存在でありたいから。

碧の左手の薬指にずっと輝き続けている指輪。
その指輪の意味を俺は怖くて聞けないけど、いつか俺があげたものをつけてくれるような時が来ればと思わずにはいられない。



「可愛くないよね、あたし」


「.......へ?」



花火を見上げながら、碧が呟いた言葉の意味が分かりかねて、疑問符が頭の中を駆け回る。



「ほら、浴衣とかきても可愛くなれたことがなくて」


「なんで?」


「うーん、似合わないんだよね。こういう格好」


クスッと笑う。



「なんでだよ、めっちゃ可愛いぞ。お前」


「似合わないって言われたことあって。それから、着るのやめてたんだよね」


「なんだよ、そいつ。絶対照れ隠しだろ」



さっき、碧がやってきたときの破壊力はとんでもなかったと思う。
「馬子にも衣装」なんて言葉で誤魔化したけど、ああでも言わないと、やばそうで。



「本当なら、俺だけが見たかったってくらい可愛いよ」


「大我、照れるよ」


「照れればいーじゃん。俺だけがお前のそういう顔見たい」



こんなの、好きだって言ってるのと同じだと思う。
でも、まだ決定的な言葉は言わないで我慢するから。
だから、俺の近くにまだいてくれたらいいなって思うんだ。