「あいつがうるさいから、前髪とメガネはいままで通りにしておくかー」



はぁっとため息をついて、水戸さんがあたしの前髪を下ろす。



「これでも十分可愛いけどね。碧ちゃん」


「可愛いくなんて、ないよ.......」



あたしがそうなりたくて、この姿を選んだんだから。
少しでも、素顔が見えにくいメガネをかけて、前髪は長めにして。
そうしたのは、目立ちたくなかったから。

元々のあたしは、ハッキリとした顔立ちで普通にしていても周りの子よりも目立ってしまうのはわかっていた。
でも、その顔のせいで、傷つけてしまう人がいたから。
あたしはもう誰のことも傷つけたくなくて、こうする道を選んだ。



「そういえば、碧ちゃん。着替えスペースでいったいなにがあったの?」


「あ.......」



さっきの着替えスペースでの出来事を思い出す。



「言いたくないなら、これ以上は聞かないけど.......碧ちゃん聞いてほしそうな顔してる」


「.......っ、水戸さん」


「あ、俺きっと居ない方がいいだろうから.......出てくよ」



あたしに気を使ってか、松波くんがヒラヒラと手を振って出ていく。