「だれも知らないところに、行きたい.......」

「知らないところって大和くんは.......?それに実莉ちゃんやサクは?」

「逃げたい.......みんなには申し訳ないけど、だれにも会いたくない!」


ポタポタと流れる涙は止まることを知らないようだ。
枯れることがないかのように流れ続ける。


「そっか.......おじさんの住んでるところに行ってみる?」

「え?いいの?」


お母さんの言葉に自分から言ったことなのに、目を丸くしてしまう。


「いいんじゃない?だって最近の碧は辛そうだから.......。そんな状態でここにいるよりはいい気がする」


お母さんはちゃんとあたしの変化に気づいてくれていた。
それがどんなに嬉しかったか。

大和のことは、いまだに大好きだし薬指に嵌められている指輪だって外せない。
でも、こんなぐちゃぐちゃな感情のまま大和のそばにいることはできなくてあたしは何もかもから逃げることを決めた。

あたしがいなくなったことを知ったとき、大和はどう思うのかな。
寂しいと思ってくれるのかな。

寂しいと思ってくれる大和を想像したら、なんだか嬉しくなってしまうからあたしは大概だと思うんだ。

新しい土地では目立たいように凄そうと決めていた。
いままでかけたことのないメガネをかけることに決めた。
当然、伊達メガネだけど。

いままであげていた前髪を下げて、顔はだれにもみられないように。
そうして、卒業までのわずかな期間をやり過ごそうとあたしは心に決めて転校をした。