「まぁ、簡単に諦められるもんじゃねーだろ。好きな女のことなんて」

「とかいいつつ、彼女いるくせに?あ、彼女の前の女を忘れられないとか?」

「そんなんいねーよ。俺はあいつが初恋だよ.......って何言ってんだ。俺.......」


自分で言って恥ずかしくなってきてしまった。
でも、碧のことで嘘なんかつきたくないし、誤魔化したくもない。
「忘れられない女」の話なんて否定しなくても、碧に知られるわけじゃないけど、否定しないという行為そのものがいやだ。


「相当惚れてんだ?」

「うるせーな」

「でもあれだろ?向かいの学生会館にいるんだよな。まぁ、友達紹介してもらう時に会えるし楽しみにしておくわ」


碧とできるだけ近くにいたいけど、同棲はさすがに許されないから近くにある寮をお互い選んだ。
俺のことをそんなに好きではないと思っていたから、碧も「近くがいい」って言ってくれた時は死ぬほど嬉しかった。


「お、電話だ」

「彼女?頼んでおいてくれよー?」


立ち上がった俺にウインクをするサク。


「はいはい.......お疲れー。バイト終わった?」

『うん。大我はご飯?』

「そ。ちょーど食べ終わった頃」


碧は上京してすぐにバイトを始めた。
ある程度の仕送りがある俺とは対照的に碧の仕送りは満足なものではなく、毎日のようにバイトに勤しんでる。

俺的には体を壊さないか心配だけど、お金のことに関してだけは俺がとやかく言えることではないから。