「なぁ、お前ってなんで学校で顔隠してるわけ?」



立ち寄った本屋でバイトをしているクラスメイトに遭遇してしまった。



「別に、隠してるわけじゃ「だったら学校でもそーいうふうにすればいいだろ!」



あたしの言葉を遮って、ハキハキとものを言う彼はたしか学級委員。

あたし、辛島碧(からしまみどり)は先日、今の学校に転校したばかりの高校三年生。



「あたしにはあたしの過ごし方があるから、気にしないでくれると嬉しい」



まだ何か言いたげな彼から目を逸らしてお会計してもらった本の入った袋を彼から奪い取る。



「おい、俺もうバイトあがんだよ。一緒に帰るぞ」


「え.......だから放っておいてほしいんだけど」



この人にはまだ伝わってなかったようだ。
いまのあたしは、人に関わりたいだなんて1ミリも思ってない。
そんなあたしの気持ちを知ってか知らずか、この人はズケズケとあたしに入り込もうとしてくる。

でも、絶対に扉は開いてやらない。



「この前見かけたんだよ。帰るとこ」


「はぁ.......」



この人の脈略のない話には、到底ついていけない。