「ああ…
 黙っとけばよかった。」

課長は、ばつが悪そうに目を逸らした。

「えっと… 課長?」

「いや、その、悪気はないんだ。
 ないんだけど、その、晶は俺のものだって
 誇示したいっていうか、取り返されたくない
 っていうか… 」

ははぁ…

「つまり、敢えて、付き合ってる宣言を
 してみた…と?」

「う… 」

課長は言葉を詰まらせる。

「私が社内恋愛を隠してきた事を
 知りながら、敢えて公表してみた…と?」

「……はい。」

いい年をした大男と言っても過言でない高身長の男性が、叱られた子供のようにうなだれている。

「ふふっ
 ふふふっ」

かわいい〜!!

私は笑いが止まらなくなった。

「晶?」

あ、もしかして…

「突然、名前で呼んだのも、牽制だったん
 ですか?」

「う… はい… 」

「じゃあ、手を繋いだのも?
 雪菜たちが見てるのを分かった上で、
 敢えてやったんですか?」

「………はい。」

「ふふっ
 ふふふっ」

もう、おかしくて仕方ない。

お付き合いを始めた翌日なのに、突然、名前で呼んだり、初めての恋人繋ぎなのに、二人に見えるように繋いだり、課長らしくないというか、課長って本当はこんな意外な一面があったの!?って思ってたけど、そうか、牽制だったのか。