20時。

デセールの後のコーヒーを飲んでいると、課長が店内に入ってくるのが見えた。

私が小さく手を挙げると、気づいた課長は微笑んでこちらに足を向けた。

そんな私につられて、雪菜と智也も振り返る。

「え? 速水課長? なんで?」

雪菜が戸惑った声を出す。

「ちょっと早かったかな?」

そう言って、課長は私の隣の席に腰を下ろす。

「いえ、もうこのコーヒーで終わりですから。
 課長は? お食事まだですか?」

空腹じゃ申し訳ない。

「いや、さっき、そこで林たちと軽く食べて
 きたよ。
 でも、コーヒーだけもらおうかな。
 すみません。」

と課長は通りかかった店員さんにコーヒーをオーダーする。

「あの、もしかして、速水課長と晶って… ?」

雪菜がおずおずと尋ねる。

私が隣を伺い見ると、課長もこちらを見て、目が合った。

課長が優しく微笑んでくれるから、なんだか私も嬉しくなる。

「ふふっ」

私が思わず笑みをこぼすと、

「何? なんかラブラブオーラがすごいん
 ですけど。
 ねぇ?」

と雪菜が智也に同意を求める。

「あ、ああ。」

智也も、キョロキョロと私と課長を見比べて納得がいかなそうな顔をしている。

もしかして、まだ私が、未練がましく智也を思ってると思ってた?