18時。

「お先に失礼します。」

私が席を立ち、挨拶をすると、課長が微笑んでくれた。

「お疲れ様。」

他の営業さん達からも声がかかる。

「お疲れ様でした。」

「あれ? 晶ちゃん、今日、早くない?」

そう言ったのは、林さん。
私より二つ年上の営業さん。

「ちょっと約束があって… 」

私が、申し訳なく思いながら言うと、

「いいよ、いいよ。
 晶ちゃん、いっつも働き過ぎだから。
 でも、今度、定時で帰る時は言って?
 俺も一緒に帰るから、デートしよ。」

とウィンクしてきた。

ここは営業だけあって、みんなノリのいい人が多い。特に林さんはいつもこうやってふざけてくる。

「またぁ。
 分かりました。
 次からは、林さんだけにはばれないように
 帰りますね。
 お先に失礼します。」

私もふざけ返して、席を後にした。


 毎日残業漬けの林さんは定時だと言ってたけど、うちの会社の終業時刻は本来17時半。

30分遅れた。

私は、エレベーターの中で携帯を開く。

雪菜からメールが来ていた。

〔 先に中で待ってるね。
入って左奥の窓際の席だよん。〕

かわいいくまのキャラクターがカフェラテを飲んでるスタンプが添えられている。

〔 ごめん。今、会社出るとこ。
先に注文してていいよ。〕

私は急いで店に向かった。