課長の部屋は、生活感に溢れていた。

と言えば聞こえはいいが、要するにかなり散らかっている。

会社では、あんなに何でもきちんとしてる人なのに。

思わず、部屋を見回す私に、課長は苦笑いを浮かべた。

「部屋に招いておいて、これは呆れるよな。
ま、その辺で適当にくつろいでて。
邪魔なものは、勝手に退けて
構わないから。」

課長が浴室に向かうのを見届けて、私はため息をひとつ吐いた。

彼女とかいないのかな。
あんなにイケメンなのに。

私は散乱したゴミを放置してあったコンビニの袋にまとめていく。

小さなゴミ袋が大きな山になったところへ課長がさっぱりとしたTシャツとスキニーパンツで現れた。

「片付けてくれたの? ありがとう。」

微笑む課長に私は尋ねる。

「あの、ゴミ袋って… 」

「…ああ。ちょっと待って。」

課長はキッチンのシンク下を開けると、ゴミ袋を出してくれた。

「普段は誰が来るわけでもないから、
つい散らかしちゃってね。」

ばつが悪そうに言う課長は、なんだかちょっとかわいい。

ずっと大人だと思ってたのに、なんだか少し親近感を覚えた。

「課長なら、喜んで片付けに来てくれる人、
たくさんいるでしょ?」

2人でゴミの山を片付けながら言うと、

「好きでもない人にそんな事を頼んだら、
後で揉めるだろ。
部屋を片付けるより、そっちを片付ける方が
余程大変だと思わない?」

「……確かに。」

モテるって、意外に大変なのかも。

「立川さんが来てくれればいいんだけど… 」

ボソッと聞こえたその台詞。

どういう意味?
私なら勘違いして揉めることもないってこと?

私が真意を測りかねて顔を上げると、こちらを見ていた課長と目が合ってしまった。