彼は19で死んだ。
正確に言うと消えた。
死んだかどうかは分からない。
が、死んだことになっている。
彼は消える前、
「私は天命を全う出来ない。
元々天命など授かっていない。
が、無理矢理それを作れというなら私の天命は、人間として苦しめ。という事だろう。」
と言ってまわっていた。
朝、彼は居なくなっていた。
冷たい布団はきっちり畳まれていて、
部屋の隅々まで埃は無くなっていた。
それはそれは生活感の全く無い部屋になっていた。
元から彼は存在しなかったのでは。
と、疑う人も出たほどに、
彼はきれいに消えた。
しかしそんなはずも無く、
彼の家族や友人の記憶にはしっかりと存在しており、
やはり彼は居たということになった。
彼の捜索が始まったのはその次の日からだった。
最初に探し始めたのは、彼の家族だった。
そして次に彼の友人が探し始めた。
が、家族も友人も彼が消える1ヶ月前程から、
殆ど会話を交しておらず、
探そうにもあてもないので、
実際ただただ彷徨っているだけになっていた。
すぐに、友人の一人が
「これは無駄だ。」
と言い、それに続くように
「確かに、彼の事だからまたいつか帰ってくるだろう。」
と家族の一人が言った。
警察には届けを出さず、
彼に関してはそれで終わった。
皆、少しの疑問となんとも言えない気持ちの悪いものを残したまま。