「はぁ、はぁ……」
あの長い階段を一気に駆け上がるなんて、普段から運動をしていない僕には無謀なことだった。
ひとまず、桜の木に寄りかかって息を整える。
「ふぅ……」
本当にできるかわからないけど、やってみるしかない。
でもやらないで後悔するよりやって後悔したほうが、まだいい。
午後九時まで、気がつけばあと一分となっていた。
「……五、四、三、ニ、一……」
――チリン
不思議な音色が周りを包んだ。
その瞬間、僕はつい一週間前に起きたタイムスリップの感覚を思い出した。
視界が歪み、どこかに引きずり込まれるような……。
その時と同じように、突然体が傾き何かに呑まれるような感覚に陥った。
