「バラされたくなかったら、私と付き合ってくださいよ!」

目の前で微笑む天使ーーー否、悪魔に望月瑠衣(もちづきるい)は頭を抱えた。

なぜこんなことになってしまったのか、なぜ初めて話す後輩の女子にこんなことを言われなければならないのか。

時は、昼休みが始まる前まで遡るーーー。



瑠衣は、一見するとどこにでもいる普通の男子高校生だ。森野高校の三年生、部活はバレーボール部、図書委員。成績は中の中。彼女はいないが、友達が多くそれなりに高校生活を楽しんでいる。

しかし、瑠衣は誰にも言っていない秘密がある。それはーーー。

大のハリー・ポッター好きであるということ。

ハリー・ポッターは世界的にも有名な作品で、ファンも多い。日本でも映画の歴代興収ランキングで上位に入るほど人気だ。

瑠衣は小学生の時に、誕生日プレゼントとして買ってもらったことがきっかけでハリー・ポッターと出会った。

「何だよ、この分厚い本……」