「今という過去?」とあたし。

バーだ。
会話相手はナジカ。

あたしの友人だ。

「そ。
作品は過去を含んでいるものなのよ」
とナジカ。

周囲の人びとをあたしは見る。

変えられなかった過去。

そしてその変えられない過去に今ここがあるものなのだ。

「少し違うと思うな。
登場人物が努力するのはその過去を変えるためだ。

「今ここ」を変えるのも過去の解釈を変える、という願望があるためだと思うな」とあたし。

「確かにね」とナジカ。

リキュールをナジカは口に含む。