愛を捧ぐフール【完】

 ーーああ、実際に見てしまうなんて。


 息がつまる。鉛の埋まったような重い胸が苦しい。
 胸を抑えた手が、酷く冷たくなっていた。


 今まで私、どうやってクリストフォロス様の隣にいれたの?どうやってクリストフォロス様の隣で息をしていたの?


 そこは、私の場所だった筈なのにーー。


 いつの間に部屋に戻ってきたのかは分からない。
 様子のおかしい私を、イオアンナも他の侍女達も心配しているのが分かる。顔を覗き込まれ、何か言われているのも分かる。労わるように優しく身体に触れる彼女達の手も分かる。


 でも何を言っているか、全く頭に入ってこない。


 視界が霞んで揺れる。
 ああ、疲れて、しまった。


「エレオノラ様っっ!!」


 イオアンナの声が聞こえた気がしたけれど、私は襲ってくる闇にそのまま身を任せた。