頬を赤らめ、恥じらいながら話しだすテレンティア様の言葉にその場の空気がほんの少しだけ変わった。


 テレンティア様が気付いているのかいないのかは分からない。純粋無垢な少女のように閨での話をしようとするテレンティア様に敵意を向け、空気の変化を起こしたのは私の侍女達だろう。


「そ、そうですか……」

「ええ、エレオノラ様。エレオノラ様は私が嫁いでくる前はどうだったのですか?毎晩お辛くは無かったのですか?」


 身体を壊してしまってからそういう事はない。クリストフォロス様は壊れ物を扱うように、私に恐る恐る接するようになった。
 私が傷付くのを怖がっているような顔をして。


「いえ……、私は毎晩ではないので……」


 代わりに結婚当初の事をしどろもどろに話すと、テレンティア様はびっくりしたように目を丸くした。


「まあ!エレオノラ様は毎日求められることはなかったのですね!でもエレオノラ様はとても華奢でいらっしゃいますし、クリストフォロス様もきっと怖々だったのかもしれまさんね」

「さ、さあ……どうかしらね……」

「私にも手加減して下されれば嬉しいのですが……」

「それは……クリストフォロス様にお願いするしかないですわ」

「お願いしているのですけれど、クリストフォロス様が聞き入れてくださらないんですもの」