波打つたっぷりと量のある黒髪は、彼女の褐色がかった肌と紅色の猫目に似合っていた。
 非常に妖艶な雰囲気の美女で、気怠そうにしている姿が益々彼女の魅力を掻き立てている。


 私とは大違いだな、と自然と思った。


「テレンティア様。こちらの生活はどうですか?隣国とは文化が違うと耳にしましたわ。慣れないことが多いでしょう?」

「ええ……、最初は戸惑いましたが、クリストフォロス様もクリストフォロス様が付けて下さった侍女達も、とても良くしてくれているので過ごしやすいです」


 妖艶な外見とは裏腹に初心な少女のような、はにかんだ笑みをテレンティア様はみせた。
 みんながクリストフォロス様を陛下と呼んでいたから、テレンティア様が私と同じように彼をクリストフォロス様と呼ぶことにほんの少しだけ胸が痛んだ。


「それならば良かったです。クリストフォロス様はとてもお優しい方ですから、テレンティア様が異国で大変な思いをしないようにとお心を砕いて下さったのでしょう。私もテレンティア様と同じくクリストフォロス様の妻。何かあればいつでも相談に乗りますわ」