愛を捧ぐフール【完】

「ごめん!!エレオノラ。ちょっと頭に血が上っていた」


 寝台の上で咳き込む私にクリストフォロス様は、慌てて剣を納めて駆け寄る。おろおろしながら、背中を摩って少しでも私の苦しみを紛らわせてくれようとする彼はとても苦悩に満ちた顔をしていた。


「クリストフォロス様」


 咳も収まり、乱れた息を整えた後に私は静かに彼の名前を呼んだ。
 宮殿医は言った。子供を授かる事は無理でしょう、子供は勿論王太子妃様の命さえ危ぶまれます、と。


 それでもクリストフォロス様は王太子様なのだ。


「……だ、駄目。駄目だよ、エレオノラ」


 私が何を言いたいのか正しく察したらしいクリストフォロス様は、みるみる顔を強ばらせて首を振る。
 普段の自信に満ちた、完璧な王太子様の影はどこにも見当たらない。


 それ位、怯えていた。