愛を捧ぐフール【完】

 近くにいる私の方がびっくりした。クリストフォロス様が声を荒らげる事なんて、今まで無かったから。


「申し訳ございません……!なにせ病の進み具合から見て、お命をこの世に留められた事だけでも奇跡のような事でして……」

「黙れ!!元々はというと、お前が初診で病の具合を見誤ったからであろうが!!」

「ひっ、!」


 ぶるぶると可哀想な位震えて平服する宮殿医に、クリストフォロス様は普段飾りで付けているような剣を、勢いに任せて抜き放つ。


 剣身が光を浴びて美しく煌めく。真っ直ぐな太刀筋と共に宮殿医に振り落とされそうになった所で、私は慌てて我に返った。


「クリストフォロス様駄目です!!彼はよく私を看病してくれました。それに医師も不足しています。今彼を殺してしまってはなりません!」


 大声で言い放った後、喉に違和感を感じて軽く咳き込んでしまう。ヒリヒリと喉が焼け付くように痛んだ。