愛を捧ぐフール【完】

 本当に非常事態で、私達の周りは隔離されていると言っていいくらい外から流行病が入らないようにしていたし、勿論宮殿で催される催事は全て中止となっていた。


「クリストフォロス様はお加減は大丈夫なのですか?!」

「僕は何ともない。君はどうなんだい?!」

「ええ。私も何ともありません」


 取り敢えずお互いの無事を確認して、ほっと一息ついた。


「エレオノラ。何かあったらちゃんとすぐに言うんだよ。宮殿には医者もずっといるから、異変があればすぐに相談して」

「はい。クリストフォロス様もお気を付け下さい」

「ああ。勿論だよ。僕が倒れる訳にはいかないしね」


 それにしても相変わらず綺麗だね、と穏やかに微笑んだ彼は、私の結いかけの髪を崩さないようにひと房手に取ってキスを落とす。


 どんなに傍にいても、何度夜を過ごしても、クリストフォロス様が不意打ちで取る戯れは相変わらず心臓に悪い。


 一気に上がった私の体温が目に見えたのだろう。
 クリストフォロス様は薄氷色の瞳に熱っぽい色を宿して私の頬を撫でる。しかし、彼を呼びに来た侍従の声に反応して、瞬きの後にその熱を霧散させた。


「それじゃあ、エレオノラ。また後で」

「はい。行ってらっしゃいませ」


 これが、私達の幸せの終着点だった。