国中の誰もが私達を祝福した。誰もが私達をお似合いの夫婦だと言った。誰もが私達を羨んだ。


 今でも鮮明に覚えている。
 神に誓いを立て、城下を一周し、王城のバルコニーでも民衆に手を振ったのを。
 その傍らにはずっとクリストフォロス様がいて、私を導いてくれていた事を。


 深窓の姫だった私は、勿論城下になんか出たことがなくて、私達を一目見ようと詰めかけた民衆に圧倒された。そして城下が私が思うよりもとても広くて、世界が一気に広がったのだった。


 そんな私の様子に気付いたクリストフォロス様が、私にこっそりと「これからは色んなところに連れて行ってあげるよ」なんて耳うちしてくれて、実際に様々な場所へと連れて行ってくれた。


 一国の次代を担う予定の私達に向けられた感情は、必ずしも良いものだけではなかったけれど、その度にクリストフォロス様は私を悪意から守ってくれていた。
 そして私も、クリストフォロス様に並び立てるように、立派な淑女になろうと更に決意を新たにしていたのである。


 だけれど、私達の幸福な生活は突き落とされるようにして終わった。