まさに天に愛されたと言ってもいい位、政治についての知識も、打ち出す政策も、皆を纏める力もある。武術は騎士並みだが、王子としては充分すぎる位だ。

 コンプレックスを抱かないとは言わない。むしろコンプレックスだらけだが、全く力の及ばない反則みたいな兄に敵おうだなんて無理でしかない。

 何より当の本人が争うような感じには見えない見かけ通りの穏やかな人柄なので、張り合おうとするだけ無駄なのである。


 そんな兄だ。何か上手い打開策が見つかるかもしれない、と先程まで婚約破棄について調べて纏めたノートを見せた。


「これはなんだい?……婚約破棄?」

「ええ。穏便に婚約破棄するにはどうすればいいかと思いまして……」

「穏便に婚約破棄だなんて、全然穏便じゃない話だね。アルフィオは婚約者なんていなかったよね?」

「ええ。私ではなく友人の為なのです」

「友人ね……。もし良ければ誰か教えてくれないかい?婚約破棄なんて、当事者同士の問題だけではないから」