「第二王子である私が第一王子派をどうこうするのも、まず当事者である両家が合意してるのに横槍を入れるのもやはり難しいな……」


 これまでの婚約破棄の記録にザッと目を通してみたが、特に今回の件に適用出来そうな過去例が無い。
 クラリーチェ嬢が不貞をしたとかならセウェルス伯爵は流石に婚約破棄しそうだが、クラリーチェ嬢の風評被害が酷すぎる。


 まず不貞なんてしそうにない。
 見た感じクラリーチェ嬢は清廉潔白そうな感じがする。


 一応調べてみたが、やはり父上に相談するのが一番かもしれないと思って席を立った時、書庫に知った顔が入って来るのが見えた。


「兄上」

「ああ、アルフィオか。どうしたんだい?」


 呼び止めると兄上も私の存在に気付いたらしく、柔らかく微笑む。
 この王国の第一王子であり、王太子でもある兄は、生まれ以外何一つ欠点のない完璧な人間だ。