この王国では基本的には、王位継承権は生まれた順番で決まる。

 第一王子であるファウスト様を産んだお母様は、現国王の側室の1人でもう既に鬼籍に入られているお方だ。
 そして、お母様のご実家は私と同じしがない男爵。男爵であるファウスト様の御祖父様はご健在だが、男爵なんて貴族では下の方だ。後ろ盾はないに等しい。

 対して、第二王子はファウスト様と一つしか違わない上に王妃様の実の息子だ。
そして、王妃様は公爵家出身のお方。後ろ盾もしっかりしているのだ。

 そして、第二王子一派は王太子であるファウスト様を退けて国王の位につこうと目論んでいる。

 なので、現国王陛下はファウスト様が王太子になる時に後ろ盾となるよう、王妃様ご出身の家ではない公爵家から年齢の釣り合うご令嬢をファウスト様のご婚約者に据えたのだ。

 国王陛下のみ側室を娶ることを許されているが、王太子には許されていない。
 結婚もしていないうちにどこぞの男爵令嬢ごときにうつつを抜かすなど、ファウスト様の立場では到底許される事ではなかった。