ファウスト様は相変わらず、私が死んだ後のクリストフォロス様については語ってくれない。
 シストがこっそり教えてくれた、ファウスト様が〝一国を滅ぼしたことがある〟と語った事がある、と。


 もしかしたらファウスト様は壊れたまま、アルガイオの滅亡していく様を見ていたのかもしれない。
 傀儡(くぐつ)となっても、国王として。


 握り拳を作った私の手をそっと包み込んだファウスト様は、本当に穏やかで幸せそうな笑みを浮かべた。


「クリストフォロス様。弟君からお手紙が届きましたよ」

「アルフィオから?また催促の手紙かなあ……?」


 ひょっこりと窓から庭に顔を出したラウルが、ひらひらと手紙をファウスト様に見せる。
 ファウスト様は一度私の手を離してから、ラウルから手紙を受け取って私の隣まで戻ってきた。


 封を開けて、ざっくり中に目を通したファウスト様は眉間に深い皺を刻んだ。


「なんて書いてあるんですか?」

「うーん、なんて言うか……」


 歯切れの悪いファウスト様は、しばしの間悩んでいるたのか黙り込む。