フォティオスお兄様はあの後すぐに回復したと聞いた。かなり苦しそうだった。それもそのはず、飲んだのはただの睡眠薬ではなく、興奮剤のようなものも含まれていたらしい。


 こちらも後々大騒ぎになり、違法薬物として指定されたり、捕えられたりする人も出た。勿論、その中にはセウェルス伯爵も含まれていた。
 フォティオスお兄様は後遺症もなく、薬が抜けると体調も戻ったそうだ。


「では、今日は私がシストが貰ってきてくれた野菜で晩御飯を作りますね!」

「え、エレオノラは料理出来るの?」

「ラウルに教えてもらいました!」


 目を見張るファウスト様にグッと握り拳を見せると、ファウスト様は柔らかい顔をして、それは楽しみだと言ってくれる。


 貴族令嬢らしい肌荒れのない綺麗な手だったけど、最近はかなり色々なものも、冷たい水も触るのでやはり荒れてくる。


 この足は沢山地面を踏むようになった。自身の足で、気の赴くままに作られた庭ではなく、色々なものや人、自然を見て回れる。
 さすがに一人では危ないらしいので、外出はさせてもらえない。


 それでも男爵家の屋敷に閉じこもってばかりの生活をしていた頃より、世界が輝いて見える。