ファウスト様が大怪我を負ったと言われているが、実は敵の返り血を浴びたと同時に怪我をしたらしいので、大怪我に見えただけなのだと。念の為に傷を見せてもらったが、もう切り傷らしき跡しか残っていなかった。


 私達は王都や街から少し離れた場所にある、こっそりファウスト様が買っていた屋敷に住んでいる。


 第一王子であったファウスト様はあの怪我では生きていないだろうと判断されて、遺体のない葬儀が執り行われた。そして現在第二王子のアルフィオ様が王太子となっている。


 第一王子がいなくなったので、自然と第一王子派は勢いを失った。
 そして、戦いの時ならともかく、みすみすと自営陣で第一王子を奪われたグローリア王妃様の弟であった将軍にも罰が与えられた。役職が下がるだけだったが、そのお陰で第二王子派筆頭のクラウディウス公爵家の力も弱まったそうだ。


 ファウスト様が居なくなった影で、1人の男爵令嬢も居なくなったが、そちらも両親が病死として届けをもう出している。
 聞けば、まともに捜されもしなかったようだ。


 そうして私とファウスト様は世間から離れて、昔の名前を名乗って生活している。


 勿論、前世も今世も筋金入りの貴族なので、ラウルとシストに力を借りているし、生活するお金はファウスト様がアルフィオ様に送るように頼んでいると聞いた。
 それがなくとも、ファウスト様自身かなり財産を貯めていると、以前にこっそり教えてもらっている。


 アルフィオ様は、ファウスト様が生きているのを知っている為、時折手紙のやり取りをしているみたいだ。