私の傍にいる人の服を握る。少しだけ、勇気が欲しくて縋りついたけど、彼は私の手に自身のを重ねた。


「……私も、ずっとずっとファウスト様を愛しています。だから……、だから、私達は幸せになりたい。私は、諦めません」


 大それた願いだった。
 でも、どうしても叶って欲しかった願いだった。


 初めて未来への希望を持って、その言葉を声に乗せた。


「……私も、諦めない。ファウスト殿下を国王とする事を」


 這うような声と共に、私を睨み付けるアウレリウス公爵の執着に背筋が寒くなる。けれど、私は真っ直ぐその視線を受け止める。


「残念だけれど、僕とペルディッカスの意見はどこまでいっても噛み合うことは無いだろう」


 ファウスト様がこれ以上話はない、というように打ち切った。アウレリウス公爵は眉間に皺を寄せて、立ち上がる。


「申し上げましたよね?行かせません、と」