愛を捧ぐフール【完】

 はっきりと力の篭もった声と共に、フォティオスお兄様は顔を上げる。鼻に皺を寄せ、私を射抜く碧眼は熱のせいかやや潤んでいる。苦しそうにもう一度、やめろ、と荒い息と共に吐き出した。


「ですが……っ!!」

「いいか、よく聞くんだクラリーチェ。恐らく……だ。恐らく……、アウレリウス公爵は、アルガイオの時代に生きていた人間か、それと繋がっている可能性がある……。いや……、そうでないと、オリアーナも音信不通になる訳がない……」

「フォティオスお兄様?!それは後にして……」

「駄目だ、……っ」


 フォティオスお兄様に手首を引かれて、姿勢を崩す。間近に迫った彼の顔に思わず息を飲んだ。


「俺の……言う事を聞いてくれ。助けを呼ぶのは早計だ」

「でも!それではフォティオスお兄様が危ないです!!」


 私の心配をよそに、彼は口角を上げて生意気な少年のように好戦的な笑みをみせる。


「……セウェルス伯爵の思惑になんか乗ってたまるかよ」

「フォティオスお兄様……」