愛を捧ぐフール【完】

 重々しい金属の施錠音が響く。
 私は慌てて扉の前に走り寄ろうと起き上がったけれど、高いヒールを履いた足が鋭く痛んだ。先程突き飛ばされた時に痛めたらしい。


 でもそんな事には意識を割いていられなかった。足を引き摺りながらドアノブを捻るけれど、扉はビクとも動かない。

 ドアノブの下に鍵穴があるだけだ。内側と外側、両方鍵がないと施錠も解錠も出来ないのだろう。


「すまない……。お前を巻き込んだ……」


 未だに意識がハッキリしないのか、緩く首を横に振ってフォティオスお兄様は額に手を当てた。


 声も力がない。ベッドに手をついてはいるものの、その場に立っているのがやっとという状態なのが私にも分かる。


 それに、これはフォティオスお兄様のせいじゃない。


「いいえ……。いいえ、フォティオスお兄様。きっとこれは私のせいです」


 履いてて痛い靴は脱いだ。ひんやりと冷たい床に着いた足はまだ痛むけれど、私は必死に周囲の家具を見渡す。鍵らしきものは見当たらない。外から鍵を掛けたセウェルス伯爵が持って行ってしまっているらしい。