愛を捧ぐフール【完】

 半ば引き摺られるようにしてセウェルス伯爵は、私を近くの部屋に引きずり込む。床に打ち捨てる風に腕を離されて、私は絨毯に崩れ落ちた。


 やや乱雑に私を部屋の中に入れると、閉まった扉の前に立ちはだかるようにしてその小樽のような身体で仁王立ちをする。


「アウレリウス公爵は拒否したが、我々にとっては第二王子派の醜聞が欲しいんだよ。君がちょっと〝彼〟に乱暴されたフリをすればいいんだ」

「か……、れ……?」


 呆然と目を見開いた私は、からからになった喉から絞り出した。
 話す口調はいつものセウェルス伯爵と変わらない。だけれど私を見下ろす表情は、温度がなかった。


「…………ぅ、ぁ」


 部屋のベッドの上で小さく呻いた声がした。
 他の人が居るなんて思いもしなかったから、座り込んだままベッドからジリジリと距離をとる。


「……あれ、……なんで俺はここに……?」


 その人は固唾を飲んでベッドを凝視する私に気付いて、一気に眠気が飛んだのか、みるみるうちに碧眼を大きく開いた。