愛を捧ぐフール【完】

 やや時間をかけてようやく停った馬車を降りると、以前来たことがあるアウレリウス公爵の王都の本邸だった。既に他に招待された者達が来ているようで、辺りには楽しげな笑い声が聞こえる。


 セウェルス伯爵から差し出された手に自分の手を重ね、公爵の邸へと足を踏み入れる。やはり伯爵という地位にいるからか、かなり人脈の広いらしいセウェルス伯爵を見つけて数人近付いてきた。


「こんばんは、セウェルス伯爵。ご婚約者様は今日もお美しいですな。本当にお羨ましい」


 ワイングラスを片手に持ち、定型文のような賛美を並べた人に礼を言う。言葉の割に私には興味が無いらしいその人達は、さっさとセウェルス伯爵と本題に入った。
 私は会ったことのない人々だったので、その様子を黙って見ている事しかすることが無い。


「それにしても、ウルヘル辺境伯領での反乱は本当に理解し難いですな。何故王国に歯向おうと思えるのか……。やはり育ちの悪い者は考える事もいけませんな」

「そうですね。ファウスト殿下とパウロ将軍が鎮圧に向かわれたので、安心ですな」


 鎮圧。
 そう聞いて、私は顔から血の気が引くのを感じた。
 反乱が起きている事も知らなかったが、ファウスト様が出兵している事も勿論知らなかった。