ーーシストに気を取られていて、僕の方が無防備になってしまったか。


 幸いにも傷は深くない。
 だが、近くにいた将軍は自分が怪我をしたみたいに顔を真っ青にしながら、上擦った声を出した。


「ファウスト殿下!!お下がり下さい!!すぐに手当を!!」

「……分かった。あとは頼む」

「はっ、お任せ下さい!!」


 もうほとんど戦は終わりかけていた。


 あとの残りは残党のようなもの。籠城していた味方には、補給物資は無事行き届いている。怪我人、病人の為に医者の派遣も出来ていると報告があった。


 将軍の言う通りに、大人しく戦場の近くに設置していた天幕まで一兵卒のフリをしたシストと共に戻る。もう既に連絡が入っていたのか、総大将の僕の為に建てられた天幕には医者が待機していた。


 医者は僕の姿を見るなり、将軍と同じく顔を真っ青にした。そして、泡を食ったような表情で僕の服を脱がせにかかってくる。


 だけど、医者にそれは出来なかった。


 音すらなかった。
 ゆっくりと傾(かし)いで、地面に倒れ伏した医者。医者だって何が起こったのかすら、分かっていないはずだ。
 瞬きの間で医者の意識を刈り取った彼は、弁解した。


「大丈夫だよー。……意識を飛ばしてもらっただけだから」

「……シスト」