将軍のパウロは思ったよりも冷静に、僕に対して報告を行う。切れ長の金眼を細めて、僕と同様に眼下の光景を見渡していた。


 ウルヘル辺境伯の居城付近では、特に火の手が多いように見受けられる。


 ウルヘル辺境伯軍の援軍として、僕達の王国軍が来ることは反乱軍も分かっているだろう。


 ギリギリ反乱軍に気付かれない山の山頂付近の位置に本陣と天幕を張ったが、反乱軍の偵察部隊にとっくに見つかっている可能性もある。何せこちらは人数が多いので、あまり隠密には向いていない。


 踵を返し、即席で建てた天幕の中へ入る。
 もうそこには僕と将軍以外の、この戦いの責任者達が集っていた。ウルヘル辺境伯領の地図と辺境伯の居城の見取り図が簡素なテーブルに広げられている。


「待たせたね。会議を始めよう」

「はっ。殿下の御耳に入れておきたいことがあります」

「なんだい?副将軍」

「ウルヘル辺境伯の居城は城塞としての機能も充分です。そして、前王朝の名残で古いですが籠城の際にも耐えられるように奇襲用や避難用として、地下道が張り巡らされています。現在の籠城戦でこれが役に立っている模様です」